夜間、寝ている間に呼吸が止まることを奥さんから指摘されたのは、四年ほど前のことだといいます。無呼吸の時間は10秒ほどで、夜中に四、五回目は目ざめてしまいます。また、朝起きると、口の中がカラカラに乾いているそうです。きっと、睡眠中は口で呼吸をしているのでしょう。
昼間は眠気がひどく、仕事が手につかない状態。近所のお医者さんに相談すると精密検査を勧められ、当大学病院耳鼻咽喉科にて検査を受けました。
口腔内を診ると口蓋垂(のどちんこ)が長いのが認められましたが、扁桃は大きくはなく、咽頭の狭窄はありませんでした。
入院して簡易睡眠検査をしたところ、一時間あたりの無呼吸回数は五七回と高頻度で、無呼吸の時間は最長で八三秒。血液中の酸素飽和度(血液中にどれだけ酸素が含まれているかを示す値)は最低時で五〇%まで低下が見られました。ちなみに正常な人の酸素飽和度はだいたい九七~九八%です。睡眠時のCT(コンピュータ断層撮影法)検査では、舌根沈下により中咽頭が完全に閉塞していることがわかりました。閉塞型無呼吸症候群のタイプです。
まず呼吸中枢を刺激するためのアセタソラマイドという薬を服用してもらいましたが、目立った効果はありませんでした。さらにNasa- CPAP(鼻から空気を送り込むことにより気道全体を圧力で広げる呼吸補助法)を使用したところ、自覚症状は改善したものの、血液中の酸素飽和度の上昇がみられませんでした。
手術は希望されなかったため、「スリープ・スプリント」を歯科と協力のうえ製作し、就寝前に装着してもらいました。これは、下あごを前方に押し出して気道を確保する目的の、いわばマウスピースのような器具です。
その結果、無呼吸回数は一時間あたり二四回に減少し、最低酸素飽和度も八六%まで上昇。睡眠時の無呼吸は大幅に改善されました。
睡眠時無呼吸症候群は当初、きわめてまれな病気であり、異常な肥満と、立つたまま居眠りするような過剰な眠気がその典型であると考えられていました。
しかし太った大でなくても、大きないびきと不眠を訴える大のなかに睡眠時無呼吸を起こしているケースが報告されるようになってきました。
さらに80年代に入ると、欧米で睡眠時無呼吸症候群の有病率が次々と報告されはじめました。
なんと中年男性の一%~二%が睡眠時無呼吸症候群にかかっているというのです。こうした報告は、睡眠時無呼吸症候群がけっしてまれな病気ではないことを専門家たちに印象づけ、驚きをもって受け止められました。 続きを読む